【英語論文の書き方】 第26回 research, study, workなど「研究開発」を表す英語表現

2016年9月23日 12時40分

日本語では「研究開発」という表現がよく使われますが、これは本来「研究と開発」
のことで、英語では一般的にresearch and development あるいはR&Dと
表現されます。

ここで研究開発における「研究」の英語表現としては、researchの他にstudyや
workなどがあります。

同様に「開発」についてもdevelopmentやexploitationがあり、これらの用語は
状況に応じて区別して使う必要があります。

そこで今回はこれらの用語の違いについて紹介します。

 

1. 研究

(1) research
research は、新しい事実を発見する目的で、主として大学や研究機関で行われる
研究を意味しています。

researchは、本来抽象名詞であり、基本的には複数形を取らない名詞として
知られています。

したがってmany researchesというような表現を使うことはできませんので
注意が必要です。

researchが複数形で使われるのは通常、myやhis、herと言った所有格と共に
用いられる場合に限られます。

ただし、この場合のresearchは対象者の「研究活動」あるいは「研究機関」
の意味になります。

以下にresearchを使用した英文の一例を紹介します。
 
<例1> This research is supported by a private grant.
(この研究は民間の助成金による支援を受けている)

<例2> They began their research by observing the phenomenon.
(彼らはその現象を観察することから研究に着手した)

<例3> New research has shown that obesity can cause memory problems.
(新しい研究により、肥満が記憶障害の原因になることが示された)

<例4>They achieved a world-leading performance in the field of
research and education.
(彼らは、研究・教育分野で世界トップレベルの実績を達成した)

<例5> Her researches have been focused on disease prevention.
(彼女は病気の予防を中心に研究活動を行ってきた)
 
[解説]
<例1>~<例4>のresearchは、新しい事実を発見する目的での「研究」
という意味で、すべて単数形で使用されています。

一方、<例5>では「彼女の研究活動」の意味でresearchが複数形で使用されています。

(2) study
studyは本来、知識を得ようとして努力することを意味します。

また、個々の学問分野や研究活動、研究成果、発表した文書、著作物なども
表すことができます。

researchと異なり、studyは「研究活動」の意味で複数形studiesでも使用されます。
以下にstudyを使用した英文の一例を紹介します。
 
<例1> Acoustics is the study of sound and sound waves.
(音響学とは音と音波の研究のことである)

<例2> Ecology is the study of habitats and the living things that live in them.
(生態学とは生息地とその中の生物の研究のことである)

<例3> A study of atomic structure has proved that the nucleus of an atom
consists of protons and neutrons.
(ある原子構造の研究から、原子核は陽子と中性子から構成されることが分かった)

<例4> Many studies have been made to determine the effects of
smoking on the lungs.
(喫煙が肺に与える影響を究明するために多くの研究がなされてきた)
 
[解説]
<例1>と<例2>のstudyは「研究分野」の意味で使用されています。
一方、<例3><例4>では「(個々の) 研究活動」の意味で単数形および複数形で
使用されています。
 
(3) work
 workにはいろいろな意味がありますが、「研究」に関しては、人間の行う
創造活動の成果という意味で「研究(結果)」を表すことができます。

したがってworkが「研究」の意味で使われる時は、workが「研究」であることを
示す修飾語と共に用いられる傾向があります。

以下に研究の意味で使用されるworkの一例を紹介します。
 
<例1> This book is written as a scholarly work of social science.
(この本は社会科学における学究的研究をまとめたものである)

<例2> Newton formulated the theories of motion and extended
the earlier work of Galileo.
(ニュートンは運動の理論を定式化し、Galileoの初期の研究を拡張した)
 
[解説]
<例1>ではscholarlyが使われ、workが「研究(成果)」の意味で使われています。
また<例2>ではGalileoが科学者であることからearlier workがGalileoの
「初期の研究(結果)」であることが分かります。


 

2. 開発

(1) development
「研究開発」における「開発」とは、「基礎研究の成果をもとに製品化を
進める開発(業務)」のことを指しますが、developmentはこの意味での
「開発」にあたります。

したがってdevelopmentは抽象名詞ですので複数形で用いられることは
ありません。

なお、developmentには「開発」の他に「発達」の意味もあり、
「発達」の意味か、「開発」の意味かはdevelopment of A (名詞(句)) の
Aの意味から判断します。

またdevelopmentには「状況を進展させる出来事や変化」の意味もあり、
その意味を表す場合は普通名詞として複数形で使用されます。

以下にdevelopmentを用いた英文の一例を紹介します。
 
<例1> Their cooperation shortened the time from development
to production.
(彼の協力のおかげで、開発から生産までの時間が短縮された)

<例2> The development of computers has brought about a significant
change in our lives.
(コンピュータの開発によって我々の生活は著しく変化した)

<例3> The transistor is one of the most important components for
the development of computers.
(トランジスタはコンピュータ開発における最も重要な部品の1つである)

<例4> Genes control the development of the qualities of living organisms.
(遺伝子は生物の資質の発達を制御する)

<例5> We will keep you informed of any further developments.
 (今後とも状況変化がありましたらお知らせします)
 
[解説]
<例1>~<例3>におけるdevelopmentは基礎研究の成果をもとに製品化を進める開発
の意味で使用されています。

一方、<例4>では、その内容から「発達」の意味で使用されていることがわかります。

さらに<例5>では、developmentが複数形で使用されていることから、
「状況を進展させる出来事や変化」の意味で使用されていることが分かります。
 
(2) exploitation
 日本語としてはexploitationも「開発」と訳すことができます。
ただし実際の意味は、営利を目的として新たな事業を起こすことを意味します。
したがって投資を伴う「(事業)開発」という意味で用いられます。
 
<例1> The over exploitation of natural resources is a major cause
of change in the atmosphere.
(天然資源を過剰に開発することが、大気を変化させる主たる原因である)

<例2> Economical exploitation of the oil reservoirs requires the acquisition
of high-quality seismic data.
(石油貯留層を経済的に開発するには、高品質な地震データを収集する必要がある)
 
[解説]
<例1>は天然資源、<例2>は石油貯留層の開発であり、ともに営利目的の新たな
事業開発であることからexploitationが使用されています。

まとめ

以下に「研究」および「開発」という言葉にかかわる英語表現をまとめました。
 
1. 研究
(1)   research      新しい事実を発見する行為で、本来、単数形で使用される。
(2)   study          知識を得るための努力や行為。個々の学問分野や研究活動、
         研究成果、文書、著作物なども表す。複数形で使用できる。
(3)   work          「創造活動の成果」の意味での研究。
 
2. 開発
(1)  development      基礎研究の成果をもとに製品化を進めること。
                               複数形は「状況を進展させる出来事や変化」の意味。
(2)  exploitation      営利を目的とし、新しい事業などを起こすこと。          
 
 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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興野先生は弊社でも論文専門の翻訳者としてご活躍されています。
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