第30回 まちがえやすいusing, based onの使い方-分詞構文

2016年11月21日 09時52分

分詞構文は英語表現手法の1つとして知られています。
分詞構文は英文を簡潔に表現できる利点がありますが、文法的に英文とならない非文
(文法的に誤った文章)を作ってしまうことがあります。

非文は、仮にその内容は理解できたにしても、文法的に成り立たない英文ですから、
正式な英文では避ける必要があります。

そこでここでは分詞構文と懸垂分詞について紹介します。
さらに懸垂分詞を避ける具体的方法についても一例を紹介します。
*懸垂分詞: 分詞構文において、主節の主語と一致しない分詞のこと。

1. 分詞構文と懸垂分詞

分詞構文とは、「動詞 + ing」の形で表した分詞 (現在分詞および過去分詞を含む) を使用して、
動詞と接続詞の機能を併せ持つ構造の英語構文のことを言います。

分詞構文では、分詞を含む部分が一種の副詞句として主節を修飾し、
時や条件、原因、譲歩、手段、付帯状況といった様々な内容を含めて表わすことができます。
以下に分詞構文を用いた訳文の一例を示します。
 
<原文> コンピュータは2進法を用いてあらゆる仕事を行う
<訳> Using the binary system, computers do all their work.
 
上記訳文では、現在分詞usingを含む using the binary system が、
主節であるcomputers do all their workを修飾することで分詞構文を構成しています。

また、主節の主語であるcomputersとusingの主語が内容的に一致しているので、
この訳文は正しい分詞構文となっていることが分かります。
 
次に上記の原文を次のような英文に訳した場合を考えます。
 
<訳2> Using the binary system, all their work is performed by computers.
<訳3> All their work is performed by computers using the binary system.
 
<訳2>では、主節の主語であるall their work と分詞 using の主語 (計算機の使用者) とが
一致していないことが分かります。
したがって<訳2> は非文であり、using the binary system が主語のない
懸垂分詞となっていることが分かります。
 
同様に<訳3> でも、主節の主語であるall their work と分詞 using の主語 (計算機の使用者) とが
一致していないことから、非文であることが分かります。

<訳2> や <訳3>におけるusingのように、主節の主語と分詞の主語が一致しない場合、
その分詞は懸垂分詞と呼ばれています。
 
このような懸垂分詞の問題は、次の <例4> のように、分詞の主語computersを
文頭で明示することにより解決します。
このように分詞に主語を含めた分詞構文は、一般に独立分詞構文と呼ばれています。
 
<訳4> Computers using the binary system, all their work is performed by computers.
 

2. 懸垂分詞になりやすい分詞

先に紹介したusingと同様、過去分詞based onも懸垂分詞になりやすい分詞として知られています。
そこで次に、based onが懸垂分詞になる英文例を紹介し、
さらにその場合の解決法について解説します。
 
初めに、次の原文を<訳1>のような英文に訳した場合を考えます。
 
<原文> 数学モデルに基づき、タイタンには水の層があると推測されてきた。
<訳1> It has been speculated that Titan contains a liquid layer based on mathematical modeling.
 
<訳1>は一見正しい英文のように思われます。
しかしよく見ると、主節の主語 (仮主語のit) と、過去分詞 based on の主語 (水の層があると推測した人) とが、
一致していないことが分かります。

したがって<訳1> は非文であり、based on mathematical modeling が
主語のない懸垂分詞となっていることが分かります。
 
このような懸垂分詞の問題を解決する1つの方法としては、過去分詞based onの主語と、
主節の主語とを一致させることが考えられます。
そこでbased onの主語である「水の層があると推測した人」を新たにtheyとして導入し、
<訳2>のように訳文を書き直します。
 
<訳2> Based on mathematical modeling, they have speculated that Titan contains a liquid layer.
 
<訳2>では、過去分詞based onを含む based on mathematical modeling が
主節they have speculatedを修飾する分詞構文を構成しています。
ここで主節の主語であるthey (水の層があると推測した人)とbased onの主語は一致しますから、
この訳文は正しい分詞構文であることが分かります。
 
懸垂分詞の問題を解決するもう1つの方法としては、<訳3>のようにbased onを
前置詞句on the basis of (~に基づいて)で置き換えることが考えられます。

この場合、英文として分詞構文にはなりませんが、懸垂分詞を避ける1つの方法として有効です。
 
<訳3> It has been speculated that Titan contains a liquid layer on the basis of mathematical modeling.

3. 受け入れられている懸垂分詞

懸垂分詞の中には、英文としては非文になるのですが、一種の熟語として受け入れられているものもあります。
これらの懸垂分詞は、文頭で使用されることが多いのですが、文中で使用される場合もあります。

以下に熟語として受け入れられている懸垂分詞と例文を示します。

(1) assuming (that) …          (~と仮定すると)                                                             
(2) concerning …                  (~に関して)                                                                     
(3) considering …                  (~を考慮すると)
(4) compared with/to …        (~と比較すると)                                                             
(5) generally speaking …     (一般的に言えば)                                                             
(6) given (that) …                 (~が与えられると)                                                         
(7) judging by/from …           (~を判断すると)
(8) regarding …                      (~に関して)                                                                     
(9) provided that …                (~の場合には)
 
<1> Assuming no friction, calculate the speed of an object falling to the earth.
   (摩擦がないとして、地球に落下する物体の速度を計算しなさい)

<2> Concerning the train accident, no Japanese were involved.
   (その列車事故に関しては,巻き込まれた日本人はいない)

<3> Considering all possible conditions, the rocket should not have been launched.
   (あらゆる可能性を考慮すると,ロケットは発射すべきではなかった)

<4> Compared with 3 years ago, there are a larger number of people using their smart phones.
   (3年前と比べると多くの人がスマートフォンを使用している)

<5> Generally speaking, plastic is lighter than metal.
   (一般的にプラスチックは金属より軽い)

<6> Given initial conditions, we can obtain the following results: 
   (初期条件を与えると,下記結果を得ることができる)

<7> Judging by the current standards, the quality of the product needs to be improved.
   (今の基準から判断すると,その製品は品質向上が必要である)

<8> Regarding the specifications of the product, refer to the attached documents.
   (本製品の使用に関しては添付の書類を参照下さい)

<9> Water will freeze provided that its temperature is cooled to 0ºC or lower.
   (水は温度を0ºC以下に下げると氷結する)
 
 

まとめ

以下に分詞構文と懸垂分詞の定義についてまとめました。
また懸垂分詞となる分詞構文と正しい分詞構文の修正例をまとめました。

分詞構文:「動詞 + ing」の形で表した分詞を使用して、動詞と接続詞の機能を併せ持った構造の英語構文
懸垂分詞:   分詞構文において,主節の主語と一致しない分詞のこと。
懸垂分詞になりやすい分詞:using, based on
懸垂分詞とその修正例:
  1. All their work is performed by computers using the binary system. (懸垂分詞)
Using the binary system, computers do all their work.           (修正例)
  1. It has been speculated that Titan contains a liquid layer based on mathematical modeling.   (懸垂分詞)
Based on mathematical modeling, they have speculated that Titan contains a liquid layer. (修正例)
 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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興野先生は弊社でも論文専門の翻訳者としてご活躍されています。
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