【英語論文の書き方】第31回 比率や割合の表現(ratio, rate, proportion, percent, percentage)

2016年12月27日 11時09分

日本語では比率も割合もほぼ同じ意味で使用されていますが、
英語では表現する比率や割合の内容に応じてratioやrate, proportion, percent, percentageなどが
区別して使用されています。

そこで今回はこれらの言葉の具体的な意味と使い方について例文を用いて解説します。

1. ratio

ratioは日本語では比率とも割合とも訳されますが、基本的には2つの量の大きさの比率を
表す場合に使用されます。

数学的な意味では、例えば2つの量をAと Bとすれば、AのBに対する比率 r は、 r = A/Bとなります。
したがってratioを用いた比率表現は the ratio of B to Aの形で表されます。

<1> The ratio of 1 meter to 10 meters is described as 1:10 or 1/10.
 (10mに対する1mの比は1:10か1/10のように書く)

<2> Electrical impedance is the ratio of the voltage across a device
to the electrical current flowing through the device.
 (電気インピーダンスとは素子にかかる電圧と素子を流れる電流との比である)

<3> Specific gravity is the ratio of the density of a substance
to that of water at the same temperature.
 (比重とは同一温度における水の密度と物体の密度との比である)

<4> The circular constant π is the ratio of the circumference of a circle to its diameter.
 (円周率πとは円の直径に対する円周との比のことである)

<5> The ratio of an atom to an apple is almost the same as
that of an orange to Earth in diameter.
  (直径で比較すると、リンゴに対する原子の比率は、地球に対するミカンの比率にほぼ等しい)

2. rate

rateも日本語では比率とも割合とも訳されますが、
基本的には何らかの基準値を基に測定した場合の比率や割合を表す場合に使用されます。

この基準値としては以下のように、いろいろな数値が使われていますが、
時間を基準として運動する物体の速度を表す場合には、
rateではなくspeedやvelocityが使われますので注意が必要です。

一般にrateを用いた比率表現には基準値そのものが含まれていることから、
比較対象を導く前置詞toは使用されません。
 
<1> The rate of operation of this machine is better than the previous one.
 (この機械の稼働率は前のものより良い)

<2> The expansion rate of iron is constant regardless of temperature.
 (鉄の膨張率は温度の高低に係わり無く一定である)

<3> A catalyst is any substance that changes the rate of a chemical reaction
without being used up.
 (触媒とは、自らは消費されること無く、化学反応速度を変化させる物質のことである)

<4> Birth rates have been declining in industrialized countries. 
 (先進工業国では出生率が低下し続けてきた)

<5> The postage rate for a one-ounce letter to a United States address is 45 cents.
 (米国当ての重さ1オンス手紙の場合、郵便料金は45セントである)

<6> The current exchange rate is approximately 110 yen to the dollar. 
 (現在の為替レートは1ドル約110円である)

<7> Statistics shows that the unemployment rate worldwide has rapidly increased
for the past several years.
 (統計によれば、世界の失業率は過去数年間で急速に増加したとのことである)

3. proportion

proportionは日本語でもプロポーションと訳される場合がありますが、
全体に対してその一部の比率関係を表す場合に使われます。
特に全体に対してバランスのとれた状態や寸法を表す場合に良く使われます。

一般にproportionを用いた比率表現は the proportion of B to Aあるいは
the proportion of B in Aの形で使われます。

<1> The higher the proportion of water to cement, the lower the strength.
 (セメントに対して水の割合が高くなるほど強度は低くなる)

<2> A compound made up of two or more elements is chemically combined
in definite proportions by mass.
 (2つ以上の元素からできている化合物は、一定の質量比で化学的に結合している)

<3> The proportion of water to alcohol determines whether or not an ice cube sinks
or floats in a drink.
 (飲み物の中で氷が浮くか沈むかは、アルコールに対する水の割合によって決まる)

なおproportionは比率の他に次のように比例関係を表す場合にも使用されます。
<1> The resistance of a conductor increases in proportion to its length.
 (導体の抵抗は長さに比例して増加する)

<2> A straight-line graph illustrates a direct proportion,
whereas a hyperbola is indicative of an inverse proportion.  
 (直線のグラフは正比例を表し、双曲線グラフは逆比例を表す)

4.  percent / percentage

百分率を表すpercent、あるいはpercentageは100を基準とした比率や割合を表す場合に使用されます。
またpercentは1/100を表すことから、百分率の単位記号である%を使って表示することもできます。
その場合、数値と%の間には半角スペースを取りませんので注意が必要です。

なおpercent (%) やpercentageはそれ自体に基準値 100 が含まれることから、
比較対象を導く前置詞toは使用されません。
 
<1> The growth rate has increased by 12 percent each year.
 (成長率は毎年12%増加した)

<2> This filter can remove as much as 99 percent of the dust from the air.
 (このフィルターは空気中のごみを99%も取り除く)

<3> About 80% of the original articles are written in Japanese and all the abstracts are in English.
 (原著論文の約80%は日本語であるが、その抄録はすべて英語である)

<4> The sun accounts for more than 99% of the mass of the entire solar system.
 (太陽は、太陽系全体の99%を超える質量がある)

<5> The percentage of yearly human population growth around the globe in 1963 was 2.2%.
 (1963年の年間の地球人口増加率は2.2%であった)

<6> The percentage of sea freight in Japan’s international trade is declining.
 (日本の国際貿易における船便貨物の割合は低下している)

<7> Percentages are based on 100, and the fraction 1/4 is the same as 25%.
 (百分率は100を基準に表され,1/4は25%と同じである)

まとめ

 以下にratio, rate, proportion, percent / percentageの違いについてまとめました。
 
 ratio:          2つの量の大きさの比率を表す場合に、the ratio of B to Aの形で使用される。

 rate:         何らかの基準値を基に測定した場合の比率や割合を表す場合に使用される。
        比較対象を導く前置詞toは使用されない。

 proportion: 全体に対し、その一部の比率関係を表す場合にthe proportion of B to A
                    あるいはthe proportion of B in Aの形で使用される。

 percent / percentage:
                    ともに100を基準とした比率や割合を意味する場合に使われる。
                    比較対象を導く前置詞toは使用されない。percentは百分率の単位として使用される。
      

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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興野先生は弊社でも論文専門の翻訳者としてご活躍されています。
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