【英語論文の書き方】第16回 「つまり」「言い換えれば」を表す表現

2016年5月2日 10時49分


日本語の「つまり」や「言い換えれば」に対する英語表現としてはor やnamely, that is, in other words などが知られています。これらの語句はすべて言い換えを表す場合に使われる表現ですが、どれも同じように「つまり」や「言い換えれば」の意味で使えるのでしょうか?

今回はこれらの表現の使い方について考えます。

(1) or

orは直前に述べた内容をごく短い言葉に言い換えたり、別名で置き換えたりする場合に使われます。

<1> Genes are made of DNA, or deoxyribonucleic acid. (遺伝子はDNA,つまりデオキシリボ核酸でできている)

<2> Natto, or fermented soybeans, is a traditional Japanese food. (納豆、つまり発酵大豆は伝統的な日本食である)

<3> A tsunami, or a tidal wave, is a giant wave caused by earthquakes under the sea (津波つまり高波は、海底地震によって発生する巨大な波のことである)

<4> Many social groups interacting via the Internet are using virtual communities, or online communities. (インターネットを通じて交流する多くの社会集団が仮想コミュニティ、つまりオンラインコミュニティを使っている)

【解説】
<1> ではDNAという言葉を deoxyribonucleic acidという本来の名称で置き換えています。
<2> ではNatto という日本語をfermented soybeans という分かり易い英語の名称で置き換えています。


また <3> でもtsunamiという日本語をa tidal wave という別名で置き換えています。
同様に<4> でもvirtual communitiesという言葉をonline communities というより分かり易い別名で置き換えています。

(2) namely

namelyはラテン語のvidelicet (略語:viz.) にあたり、直前に述べた内容を具体的な名称で表す場合に使われます。
namelyが文中に来る場合はダッシュ (―)で、また文末に使用される場合はダッシュ (―) やコロン (:) で代用することが可能です。

このことから技術文書では、namelyよりもダッシュやコロンの方が良く使用されています。

<1> Forests can help reduce the buildup of greenhouse gases, namely carbon dioxide and methane.
<1’> Forests can help reduce the buildup of greenhouse gases: carbon dioxide and methane.   
(森林は、温室効果ガスつまり二酸化炭素やメタンの蓄積を減らす助けとなる)

<2> Most substances can exist in any of the three states of matter, namely solid, liquid and gas
(ほとんどの物質は、物質の3つの状態、つまり固体、液体、気体のいずれかで存在する)

<3> The three modes of heat transfer, namely, conduction, convection, and radiation, are used to determine temperature variation.
<3’> The three modes of heat transfer―conduction, convection, and radiation―are used to determine temperature variation.
(熱伝達の3つのモード、つまり伝導,対流,放射は、温度変動を決定するのに利用される)

【[解説】
<1> ではgreenhouse gasesをcarbon dioxideおよびmethaneという言葉を用いて具体的内容を示しています。
ここで <1> ではnamelyが文末に使用されていることから <1’> ではコロンを用いた表現に書き換えたものです。

<2> ではthe three states of matterをsolid, liquid, and gasという言葉を用いて具体的内容を示しています。
同様に<3> もthe three modes of heat transferという言葉をconduction, convection, and radiation という言葉を用いて具体的内容を示しています。
ここで <3> ではnamelyが文中に使用されていることから、 <3’> ではダッシュを用いた表現に書き換えたものです。


 

(3) that is (to say)

that isは直前に述べた内容を分かり易く説明したり、言い換えたりする場合に使われます。

例えば辞書を用いて用語の意味を調べる場合、調べる用語の後の説明がthat isの後に続く部分にあたります。
なおthat isはthat is to sayと書かれることもあります。

<1> The technique is based on acoustics, that is, the science of sound. (その技術は音響学,つまり音の科学に基づいている)

<2> This book is written for the general population, that is, all people age 12 or older. (この本は一般大衆、つまり12歳以上のすべての人向けに書かれたものである)

<3> The fats are usually very stable; that is, they do not readily combine with oxygen. (通常その油脂は非常に安定で,酸素とは簡単には反応しない)

<4>No species can survive unless they can adapt to changing environmental conditions; that is, all the present-day species have succeeded in adapting to new situations. (環境条件に適合できなければどんな種も生き残れない。つまり現在のすべての種は新しい状況に適応できたということである。)

【解説】 
<1> では acoustics (音響学) という言葉を、より分かり易い the science of sound (音の科学)という言葉で説明しています。
また<2> では the general population (一般大衆) を分かり易くall people age 12 or older (2歳以上のすべての人)という言葉で説明しています。

さらに<3>では、The fats are usually very stable (通常その油脂は非常に安定) という内容をより分かり易い表現としてthey do not readily combine with oxygen (酸素とは簡単には反応しない)という表現に言い換えています。

同様に <4> でも No species can survive … conditions (環境条件に適合できなければどんな種も生き残れない) という前文の内容をall the present-day species have succeeded … situations (現在のすべての種は新しい状況に適応できたということである)という、より分かり易い表現に言い換えています。 


 

(4) in other words

in other wordsは、直前に述べた内容をより分かり易くかつ別な言葉で説明する場合に、基本的に文頭で使用されます。

<1> Japan is an island country. In other words, we are surrounded by the sea. (日本は島国である。つまり海に囲まれているということである)

<2> A body above the ground has potential energy. In other words, it has stored energy due to its position. (地面より上にある物体には位置エネルギーがある。つまりその位置に起因するエネルギーが保存されているということである。)

<3> Cloning can produce genetically identical copies of animals. In other words, it may enable mass production of animals with artificially selected genetic characteristics. (クローン技術は,同じ遺伝的特徴を持つ動物を作り出すことができる。つまり人為的に選んだ遺伝的特徴を持つ動物の大量生産などが可能だということである。)

【解説】
<1> では、その前文でJapan is an island country (日本は島国である) と述べていますが、これだけではan island country (島国) の意味が分かり難いと判断し、In other wordsを用いた文を追加してその内容を別な表現で分かり易く説明しています。

<2> では、その前文で、A body above the ground has potential energy (地面より上にある物体には位置エネルギーがある) と述べていますが、これだけではpotential energy (位置エネルギー) の意味が分かり難いと判断し、In other wordsを用いた文を追加してその内容を別な表現で分かり易く説明しています。

<3> では、その前文で、Cloning can produce genetically identical copies of animals. (クローン技術は,同じ遺伝的特徴を持つ動物を作り出すことができる) と述べていますが、これだけではgenetically identical copies of animals (同じ遺伝的特徴を持つ動物) の意味が分かり難いと判断し、In other wordsを用いた文を追加してその内容を別な表現で分かり易く説明しています。


 

まとめ

以下に、「つまり」や「言い換えれば」に対する英語表現が使用される場合についてまとめました。

or: 直前に述べた内容をごく短い言葉に言い換えたり、別名で置き換えたりする場合
 namely : 直前に述べた内容を具体的な名称で表す場合
 that is (to say): 直前に述べた内容を分かり易く説明したり、言い換えたりする場合
● in other words: 直前に述べた内容をより分かり易くかつ別な言葉で説明する場合に文頭で使用


 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)氏

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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