【英語論文の書き方】第17回 寸法や重量を表す表現

2016年6月14日 15時55分

英語で物の寸法や重量を表す表現には沢山ありますが、どの表現を使うかは文書の種類や内容に依存します。
そこで今回は、物の寸法や重量を表す英語表現について種々のパターンとそれらの特徴について紹介します。
また技術文書によく使われる表現例についても紹介します。


 

1. 寸法表現

1.1 寸法の基本表現
寸法を表す表現の一例として、はじめに下記の日本文を英文で表現する場合の表現パターンについて考えます。
 
日本文:そのブロックの寸法は、長さ10cm, 幅は5cm, 高さは4cmである。
 
<訳例1> The size of this block is length 10 cm, width 5 cm, and height 4 cm.
[解説] この表現は原文の構成を忠実に表現した英文です。この表現は寸法 (size) に焦点が当てられていることから、寸法情報を正確に伝える場合に有効な英文ということができます。

<訳例2> The size of this block is 10 cm in length, 5 cm in width, and 4 cm in height.
[解説] この表現は<訳例1>のlength, width, heightを in length, in width, in heightに書き換えた英文です。<訳例1>に比べて前置詞 in を使用した分だけ冗長になっています。

<訳例3> The block is 10 cm long, 5 cm wide, and 4 cm high.
[解説] この表現は<訳例2>の in length, in width, in height を形容詞long, wide, highで書き換えた英文です。in lengthのような「in + 名詞」に対して形容詞を使用することで、より簡潔な英文となっていることが分かります。そのためこの表現パターンは技術文書で頻繁に使用されています。一般に「in + 名詞”」を形容詞で置き換えると、より簡潔な英文を作成することができます。ただし対応する形容詞がない場合は使えないのが欠点です。寸法に関して 「in + 名詞」を形容詞で表現できる他の例を以下に示します。
 in depth        →        deep                in thickness     →        thick        
 in diameter   →        across

<訳例4> The block measures 10 cm long, 5 cm wide, and 4 cm high.
[解説] この表現は<訳例3>のbe動詞に代わって、「寸法がある」という意味の自動詞measureを使用した英文です。blockのように主語が具体的な物である場合はmeasureを使うことができます。

<訳例5> The block has a length of 10 cm, a width of 5 cm, and a height of 4 cm.
[解説] この表現は動詞haveと名詞 length, width, heightを使用して寸法を表した英文です。この例文における「a + 寸法変数 + 数値」は寸法表示パターンの1つとして技術英文で頻繁に使用されています。

<訳例6> This is a 10-cm-long, 5-cm-wide, and 4-cm-high block.
[解説] この表現は具体的寸法情報をblockの前に前置修飾させることで、より簡潔に表した英文です。この表現は語数が少なく、簡潔である反面、修飾語が長くなって分かり難いことから、語数を減らしたい場合に使用されます。

<訳例7> The size of this block is 10 cm (L), 5 cm (W), and 4 cm (H).
[解説] この表現はlengthを記号L, widthを記号W, 高さを記号Hで表すことでより簡潔に表した英文です。この表現は語数が少なく、簡潔である反面、略語を用いていることから、略語の意味が明らかな場合や語数を減らしたい場合に使用されます。

<訳例8> The size of this block is L 10 cm × W 5 cm × H 4 cm.
[解説] この表現は<訳例7>を掛け算記号×を使って表した英文です。この表現も語数が少なく、簡潔である反面、略語を用いていることから、略語の意味が明らかな場合や語数を減らしたい場合に使用されます。

<訳例9> The size of this block is 10 cm (L) by 5 cm (W) by 4 cm (H).
[解説] この表現は<訳例8>の掛け算記号×に代わり、前置詞by 使って表した英文です。この表現も語数が少なく、簡潔である反面、略語を用いていることから、略語の意味が明らかな場合や語数を減らしたい場合に使用されます。

1.2 物の具体的名称を伴う寸法表現

次に物の具体的名称を伴う寸法表現に関して、次の日本文を英文で表現する場合の表現パターンについて考えます。
 
日本文:その物体は木製のブロックで,寸法は、長さ10cm, 幅は5cm, 高さは4cmである。
 
<訳例1> The body is a wooden block, which is 10 cm long, 5 cm wide, and 4 cm high.
[解説] この表現は原文の構成を忠実に表現した英文です。ただしここでは、which以下の寸法を表す表現として、「寸法の基本表現」の<訳例3>を使用しました。

<訳例2> The body is a wooden block 10 cm long, 5 cm wide, and 4 cm high.
[解説] この表現はwooden blockと寸法を表す表現とを直接結合した英文です。この表現は簡潔ではありますがやや砕けた感じがあることから、正式な文書ではなく、語数を減らしたい場合などに使われています。

<訳例3> The body is a wooden block of length 10 cm, width 5 cm, and height 4 cm.
[解説] この表現はwooden blockと寸法とを、前置詞ofと名詞length, width, heightとを用いて結合した英文です。ここでlength, width, heightは無冠詞で使用します。

<訳例4> The body is a wooden block with a length of 10 cm, a width of 5 cm, and a height of 4 cm.
[解説] この表現はwooden blockと寸法を、前置詞withと名詞length, width, heightを用いて結合した英文です。ここで寸法情報はa length of, a width of, a height ofのように不定冠詞と共に使用します。

<訳例5> The body is a wooden block having a length of 10 cm, a width of 5 cm, and a height of 4 cm.
[解説] この表現は<訳例4>における前置詞withを現在分詞havingで書き換えた英文です。withと同様、havingでもwooden blockと寸法とを結合することが可能です。

<訳例6> The body is a 10-cm-long, 5-cm-wide, and 4-cm-high wooden block.
[解説] この表現は具体的寸法情報をwooden blockの前に前置修飾することで,簡潔化した英文です。この表現は語数が少なく、簡潔である反面、修飾語が長くなることから、語数を減らしたい場合に使われます。

2. 物体の重量

2.1 重量の基本表現
重量を表す表現の一例として、はじめに下記の日本文を英文で表現する場合の表現パターンについて考えます。
 
日本文:そのブロックの重量は、重さ2kgである。
 
<訳例1> The weight of the block is 2 kg.
[解説] この表現は原文の構成を忠実に表現した英文です。この表現は重量(weight) に焦点が当てられていることから、寸法情報を正確に伝える場合に有効な英文ということができます。

<訳例2> The block is 2 kg in weight.
[解説] この表現はblockを主語とし、重量をin weightで表現した英文です。この英文ではblockが主語となっているため、より分かり易い英文とになっています。

<訳例3> The block is 2 kg heavy.
[解説] この表現は<訳例2> における “in weight”を形容詞heavyで書き換えた英文です。形容詞heavyを使用したことから、より簡潔な英文となっていますが、技術文としてはあまり見られないパターンです。

<訳例4> The block has a weight of 2 kg.
[解説] この表現は動詞haveと名詞 weightを使用して重量を表した英文です。この例文における「a + 重量 + 数値」は重量表示パターンの1つとして技術英文で使用されています。

<訳例5> The block weighs 2 kg.
[解説] この表現は「~の重さがある」という意味の動詞weighを使って重量を表現した英文です。上記訳例の中では最も簡潔で一般的に使用されるパターンです。

2.2 物の具体的名称を伴う重量表現

次に物の具体的名称を伴う重量表現に関して、次の日本文を英文で表現する場合の表現パターンについて考えます。
 
日本文:その物体は木製のブロックで,重量は2kgである。
 
<訳例1> The body is a wooden block, which weighs 2 kg.
 [解説] この表現は原文の構成を忠実に表現した英文です。ただしここでは、which以下の寸法を表す表現として、「重量の基本表現」の<訳例4>を使用しました。

<訳例2> The body is a wooden block of weight 2 kg.
 [解説] この表現はwooden blockと寸法を、前置詞ofと名詞weightを用いて結合した英文です。ここでweightは無冠詞で使用します。

<訳例3> The body is a wooden block with a weight of 2 kg.
 [解説] この表現はwooden blockと寸法情報を、前置詞withと名詞weightを用いて結合した英文です。ここでweightはa weight ofのように不定冠詞と共に使用します。

<訳例4> The body is a wooden block having a weight of 2 kg.
 [解説] この表現は<訳例3>における前置詞withを現在分詞havingで書き換えた英文です。withと同様、havingでもwooden blockと重量とを結合することが可能です。

<訳例5> The body is a 2-kg heavy wooden block.
 [解説] この表現は重量情報をblockの前に前置修飾することで、より簡潔に表した英文です。この表現は語数を減らしたい場合に使用されます。

まとめ

寸法や重量に関して技術文書で使用されている代表的な表現パターンを以下にまとめました。
 

寸法表現
・基本:The block is 10 cm long, 5 cm wide, and 4 cm high.
            The block is 10 cm in length, 5 cm in width, and 4 cm in height.
            The block has a length of 10 cm, a width of 5 cm, and a height of 4 cm.

・応用:The body is a wooden block of length 10 cm, width 5 cm, and height 4 cm.
            The body is a wooden block with a length of 10 cm, a width of 5 cm, and a height of 4 cm.            

重量表現
・基本:The block weighs 2 kg.
            The block is 2 kg in weight.
            The block has a weight of 2 kg.

・応用:The body is a wooden block of weight 2 kg.
            The body is a wooden block with a weight of 2 kg                                
 
 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)氏

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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