【英語論文の書き方】第19回 前置詞 of の使い方: Part 2

2016年6月16日 12時49分

前回第18回のつづきです。
まだ読んでいない方は、第18回からお読みください。

(6) 部分を表すof

部分を表すofはA of Bの構成で、Bが全体Aの一部であることを表します。

例えばone of us (我々の1人) や none of them (誰も~ない)、a friend of mine (私の友人の一人) などのof があげられます。部分を表すof は基本的に「Bの中におけるA」の意味を表しますが、日本語の「の」を用いて「BのA」と訳すことも可能です。

しかし部分を表すofが日本語の「の」に直接対応しているわけではないので、あくまで、「全体と部分」の関係を表す of であることを認識して使う必要があります。なおここで述べた「一部」とは、AとBとが同一部類に属することが条件になります。
 
<例1> The copper is one of the best electrical conductors on our planet.
      (銅は我々の惑星の中で最良の電気伝導体の1つである)

<例2> Nearly one-tenth of industrial accidents are caused by the misuse of hand tools.
      (産業事故のほぼ1/10は,手工具の誤用が原因である)

<例3> The ozone layer absorbs a part of the ultraviolet rays emitted by the sun.
      (オゾン層は、太陽から発せられる紫外線の一部を吸収する)
 
[解説]
<例1>では copper (銅) が the best electrical conductors (最良の電気伝導体) の中の1つであることを、<例文2>ではone-tenth (1/10) がindustrial accidents (産業事故) の10%を占めること、また<例文3>ではオゾン層が ultraviolet raysの一部を吸収することを、部分を表すof を用いて表しています。
 

(7) 構成材料・成分を表すof

構成材料・成分を表すofはA of Bの構成、あるいは A + V (動詞) of B の構成で、BがAの構成材料や成分であることを表します。

例えばa table of wood(木製のテーブル)やa house of brick (レンガの家)、a family of five (5人家族)などのof があげられます。構成材料・成分を表すofは「Bという材料で作られたA」の意味を表しますが、日本語の「の」を用いて「BのA」と訳すことも可能です。

しかし構成材料・成分を表すofが日本語の「の」に直接対応しているわけではないので、あくまで「構成材料・成分」を表す of であることを認識して使う必要があります。
 
<例1> A film of oil was floating on the water.
 (水面には油の膜が浮いていた)

<例2> A thick layer of paint will take a long time to dry.
     (厚く塗ったペンキ層は乾くのに時間がかかる)

<例3> A lens bends a ray of light passing through it.
     (レンズは光線が通過するとその光線を屈折させる)

<例4> Concrete consists of cement, sand, and gravel.
     (コンクリートはセメント,砂,砂利からなる)
 
[解説]
 <例1>ではoil (油) がfilm (膜) の構成材料であること、<例2>ではpaint (ペンキ) が a thick layer (厚い層) の構成材料であることを示しています。また <例3>では light (光) が ray (光線) の構成成分であることを示しています。

一方 <例4> ではA consists of B の構成で cement, sand, and gravel (セメント,砂,砂利) が cement (セメント) の構成材料になっていることを表しています。

(8) 計量を表すof

計量を表すofはA of Bの構成で、BからAを計量の単位として分離し、Bの量がAであることを表します。

例えばtwo grams of salt (2グラムの塩) や a cup of coffee (一杯のコーヒー) などの ofがあげられます。
計量を表すofは「Bの量がAであること」を表しますが、a cup of coffee (一杯のコーヒー) のように日本語の「の」を用いて、通常とは逆の「AのB」と訳すことができます。

ただし計量を表すofが日本語の「の」に直接対応しているわけではないので、あくまで「計量」を表す of であることを認識して使う必要があります。
 
<例1> Pour 100 ml of cold water in a beaker slowly.
    (100mlの冷水をビーカーにゆっくりと注ぎなさい)

<例2> The ISS is equipped with about 4,000 m2 of solar panels.
    (ISSには面積約4,000 m2の太陽電池パネルが付いている)

<例3> Vaporizing 1 gram of water requires 539 calories of heat.
    (水1gを気化させるには,539カロリーの熱が必要である)
 
[解説]
<例1>ではcold water (冷水) の体積が 100ml であること、<例2>ではsolar panels (太陽電池パネル) の面積が 4,000 m2 であることを、計量を表す of を用いて表しています。
また<例3>ではwater (水) の重さが1gであること、また熱量が539カロリーであることを、計量を表す of を用いて表しています。
 
なお上記に紹介した前置詞 of はofの持つ多くの機能の一部にすぎません。例えばofには、上記以外にも「原因」、「行為・状態の主体」、「起源・出所」、「関連性」などを表す場合などにも使用されます。

これらのof は日本語の「の」に直接対応しているわけではないので、あくまでofの持つ本来の意味を認識した上で使うことが重要になります。

日本語の「~の」を of と訳せない場合

 日本語の「の」は必ずしも of で表せるわけではありません。そこで次に日本語の「の」をof と訳せない場合の代表例を紹介します。なお前置詞を使わない表現例についても一部併記しました。

(1) 問題の答え                     answer to a problem
(2) 数学の権威                     authority on mathematics
(3) モーターのベルト          belt on a motor
(4) 力学の本                        book on mechanics (= mechanics book)
(5) 名古屋支店                     branch in Nagoya (= Nagoya branch)
(6) 計画の変更                     change in a plan
(7) 100万円の小切手           check for \1,000,000 (= \1,000,000 check)
(8) 生産の減少                     decrease in production
(9) 両者の相違                     difference between the two
(10) 色の相違                      difference in color (= color difference)
(11) 風邪の薬                      drug for a cold
(12) 問題の方程式                equation in question
(13) 化学の実験                   experiment in chemistry (= chemistry experiment)
(14) 体重の増加                   increase in body weight
(15) 製品の情報                   information about a product (= product information)
(16) 燃料電池の問題             issue with fuel cells
(17) アルファベット順のリスト       list in alphabetical order
(18) ラジオのニュース                   news on the radio (= radio news)
(19) 原料の注文                   order for raw materials
(20) 将来の計画                   plans for the future ( = future plans)
(21) 労働時間の縮小             reduction in working hours
(22) 音響学のレポート          report in acoustics
(23) 社長の秘書                   secretary to the president
(24) 天井のスプリンクラー             sprinkler on a ceiling
(25) 絵の才能                      talent for painting
(26) 部屋の温度                   temperature in a room (= room temperature)
(27) 物理の試験                   test in physics (= physics test)

まとめ

以下に、今回述べてきた前置詞ofの代表的な使い方についてまとめました。
 
前置詞ofの代表的な使い方: Part 2
(6)  部分を表すof             (例) one of us, none of them, a friend of mine
The copper is one of the best electrical conductors on our planet.

(7)  構成材料・成分を表すof(例) a table of wood, a house of brick
・A film of oil was floating on the water.
・A lens bends a ray of light passing through it.

(8)  計量を表すof :      (例) two grams of salt, a cup of coffee
・Pour 100 ml of cold water in a beaker slowly.
・Vaporizing 1 gram of water requires 539 calories of heat.

Note:前置詞 of は日本語の「の」に直接対応しているわけではないので、あくまでofの持つ意味を認識した上で使うことが重要。
 
 
 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)氏

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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