【英語論文の書き方】第18回 前置詞 of の使い方: Part 1

2016年5月31日 10時57分

前置詞 of の使い方の1つに「所有」の意味があります。
例えば「その部屋ドア」を表す場合は the door of the room のようにof を使用して「AのB」の「」部分を表すことが出来ます。

しかし日本語の「」に対応して,いつでも前置詞ofが使えるわけではありません。
例えば「製品の情報」はinformation on productsであって,information of productsではありません。

そこで前置詞ofの代表的な使い方について紹介します。


(1) 所属を表すof

所属を表すofはA of Bの構成でAがBに所属すること,あるいはBがAを所有することを表します。
したがって前置詞ofは日本語の「」に直接対応していることが分かります。
例えば「家の屋根」ならば「家に所属する屋根」と解釈できますから,the roof of a houseとなります。
 
<例1> The tip of the soldering iron was missing.
     (半田ごてこて先がなかった)

<例2> The needle of a compass indicates south and north.
     (コンパス針は南北を示す)

<例3> The load divided by the cross-section area of the piston gives the pressure.
     (荷重をピストン断面積で割ると,圧力が得られる)
 
[解説]  
<例1> の ofが「半田ごて」に所属する「こて先」,<例2> のofは「コンパス」に所属する「針」,<例3> のofは「ピストン」に所属する「断面積」であることを示しています。
 
科学技術では主として無生物を扱うことから,所属を表すof が頻繁に使用されます。

生物 (例えば機関や組織,法人) を扱う場合は,アポストロフィー + s ( ’s) による表現が可能ですが,所属のofを使うことも可能で,例えばPresident of the United States (米国の大統領) のように表すことができます。

会社の役員の場合は,会社という法人に所属していることから an executive officer of a company と表されます。

 

(2) 主格関係を表すof

例えばHis father died. という英文では,His fatherが主語 (主格),diedは述語 (自動詞) となっています。

この英文は主語と自動詞からなる文の形をしていますが,名詞句としてdeath of his father と表しても情報が失われることはありません。

このように「述語部(自動詞)の名詞形 + of + 主語 (主格)」の構成で使用される前置詞 of は一般に,主格のof と呼ばれています。

主格のofは本来主格の意味で使われることから,日本語では「の」や「が」に対応します。
 
<例1> The vibration of this device is kept to a minimum.
    (この装置振動は最小限に押さえられている)

<例2> This reaction occurs only in the presence of a catalyst.
    (この反応は触媒存在する時のみ生ずる)

<例3> The appearance of the Internet has changed almost every aspect of our life.
(インターネット出現で我々の生活はほとんどあらゆる面で変化した)
 
 [解説] <例1>の The vibration of this deviceはThis device vibratesと書き変えることができますから,主格のofが使われていることが分かります。

日本語でも「装置振動」のように「の」で表すことが可能です。

<例2>のthe presence of a catalystはa catalyst is present と書き変えることができますから,<例1>と同様,主格のofが使われています。

日本語で「触媒存在時のみ」と表現することは可能ですが,「触媒存在する時のみ」とした方が自然な表現になります。

<例3>のThe appearance of the InternetはThe Internet appearsと書き変えることができますから,やはり主格のofが使われています。

日本語で「インターネット出現」と表すことができますが,「インターネット出現したことで」と表現することも可能です。

 

(3) 目的格関係を表すof

例えばHe founded a company. という英文では,Heが主語 (主格),foundedが他動詞,a companyが動詞の目的語(目的格) となっています。

この英文は主語と動詞および目的語のからなる文の形をしていますが,その他動詞と目的語の部分を名詞句として foundation of a company と表しても情報が失われることはありません。

このように「他動詞の名詞形 + of + 目的語 (目的格)」の構成で使用される前置詞 of は一般に目的格のofと呼ばれています。

目的格のofは本来目的格の意味で使われることから,日本語では「の」や「を」に対応します。
 
<例1> The development of medicine has enabled human beings to live longer.
    (薬の発明によって人間は長生きできるようになった)

<例2> Vaccines protect our bodies by promoting the production of antibodies.
    (ワクチンは,抗体の製造を促進することで我々の体を守る)

<例3>The analysis of the measured results is described in the latter part of the paper.
    (測定結果の分析は論文の後半に記載されている)
 
[解説]
<例1>の The development of medicineは (They) developed medicine.と書き変えることができますから,目的格のofが使われていることが分かります。日本語でも「薬発明」のように「の」で表すことが可能です。

<例2>のthe production of antibodiesは(They) produce antibodies. と書き変えることができますから,目的格のofが使われています。日本語で「抗体の製造」と表現することは可能ですが,「抗体作ること」と表すことも可能です。

<例3>のThe analysis of the measured resultsは(We) analyzed the measured resultsと書き変えることができますから,やはり目的格のofが使われています。日本語で「測定結果分析」のように表すことができます。
 

(4) 同格関係を表すof

例えば an idea of improving products (製品を開発するという考え) という名詞句ではan idea = improving productsの関係にあります。

つまりan ideaが概要,improving productsがその具体的内容という同格の関係にあります。

このように「概要+ of + 具体的内容」の構成で使用される前置詞 of は一般に同格のofと呼ばれています。

同格のofは本来同格の意味で使用されることから日本語の「~という」に対応します。日本語の「の」で表されることは殆どないので注意が必要です。
 
<例1> This car has a maximum speed of 150 km per hour.
    (この車の最高速度は時速150 kmである)

<例2> Heat has the property of changing a liquid to a gas.
    (熱は液体を気体に変える特性がある)

<例3> Nobody can achieve the goal of building a machine capable of perpetual motion.
    (永久運動が可能な機械を作る目標を達成できる人はいない)
 
[解説]
<例1>の a maximum speed of 150 km per hourは a maximum speedが概要で 150 km per hourが具体的内容を表していますから同格のofが使われていることが分かります。日本語では「時速150kmという最高速度」と表すことが可能ですが,少し冗長ですので,「最高速度,時速150km」としています。日本語の「の」が使われていないことに注意して下さい。

<例2>のthe property of changing a liquidは,the property が概要でchanging a liquidが具体的内容を表していますから, <例1>と同様,同格のofが使われています。日本語で「気体に変えるという特性」と表すことが可能ですが,冗長ですので「気体に変える特性」としています。

<例3>の the goal of building a machineは,the goal が概要でbuilding a machineが具体的内容を表していますから,同格のofが使われています。日本語で「機械を作るという目標」と表現することも可能ですが冗長ですので,「機械を作る目標」としています。

<例2>および<例3>でも日本語の「の」が使われていないことに注意して下さい。
 

(5) 性質や特徴を表すof

性質や特性を表すofは,A of BあるいはA … of B の構成で,Aの所属する性質・特徴がBであることを表します。

例えば a man of importanceは重要人物 (an important man),a girl of seven years は a seven-year-old girl (7歳の少女),things of use はuseful things (有用な物) の意味になります。

このように「名詞+ of + 性質や特性」の構成で使用される前置詞 of は一般に,性質や特徴のofと呼ばれています。

性質や特徴のofはその本来の意味から,日本語の「の」や「な」に対応しますが,これら日本語が使用されない場合もあります。

a man of his word (言行一致の人)           a man of ability (才能のある人)
a story of adventure (冒険の物語)      be of use (役に立つ)
be of interest (興味がある)        be of the same age (同年齢である)
 

まとめ

以下に,これまで述べてきた前置詞ofの代表的な使い方についてまとめました。
 
前置詞ofの代表的な使い方: Part 1
(1)  所属を表すof          (例) the roof of a house
The tip of the soldering iron was missing.

(2)  主格関係を表すof  (例) the sudden death of his father
The vibration of this device is kept to a minimum.

(3)  目的格関係を表すof (例) the foundation of a company
The development of medicine has enabled human beings to live longer.

(4)  同格関係を表すof:       (例) an idea of improving products
Heat has the property of changing a liquid to a gas.

(5)  性質や特徴を表すof:   (例) a man of importance, a girl of seven years
things of use
 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)氏

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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