【英語論文の書き方】第12回 同格を表す接続詞thatの使い方

2016年2月24日 14時35分

英語のthatにはいろいろな使われ方がありますが,その1つに,同格を表す接続詞thatがあります。ここで同格を表す接続詞thatとは,次のような英文に使われる接続詞thatのことを意味しています。
 
<例文> The Archimedean principle is based on the fact that a body immersed in water displaces an amount of water equal to its volume.
 (アルキメデスの原理は,水中の物体はその物体の体積に等しい量の水を押しのける,という事実に基づいている)
 
このように接続詞thatが「… 名詞(fact) + that + 主語(S) + 動詞(V)」の形で使われ,「S +V」という内容を表す場合 (ここではS +V という事実),その接続詞は「同格のthat」と呼ばれます。しかしながら同格のthatは,その前にどんな名詞がきても使えるかというと,実際はそうではありません。そこで今回は同格のthatが使える名詞について解説します。

1. 同格のthatが使える名詞の種類

文法書では同格のthatを導ける名詞の種類として,基本的に次の2つグループが紹介されています。どちらの場合であれ,同格のthatが使えるためには,「名詞 = that-節」 の関係にあることが必要になります。
 
(1)   that 節を導ける他動詞の名詞形
(2)   同格表現が可能な独立した名詞

2. that節を導ける,他動詞から派生した名詞形

「that-節を導ける他動詞」とは,接続詞that以下がS + Vから構成される節を導ける他動詞のことで,たとえば以下の<1>の英文では動詞discoverが当てはまります。
 
<1> Newton discovered that light consists of all colors.
  (ニュートンは,光がすべての色からできていることを発見した)
 
「that-節を導ける他動詞から派生した名詞」とは,他動詞discoverの場合その名詞形discoveryになります。したがってdiscoveryを使用して,<2>のような同格のthatを用いた英文を書くことができます。
 
<2> Newton made the discovery that light consists of all colors.
 
このようにthat 節を導ける他動詞の名詞形を使用すれば,同格のthatを使用した英文を作成することが可能になります。ただしこのような表現は一般に冗長になりやすく,やむを得ない場合以外,科学技術英語分野では奨められません。できるだけ動詞形で表現するか,その他の簡潔な表現を使用することをお奨めします。
 
that-節を導ける他動詞は、多くが他動詞として知られています。ただしすべての他動詞がthat-節を導けるわけではありません。そこで以下にthat-節を導ける他動詞と,導けない他動詞の一例を,同格のthatを用いた具体的例文を含めて紹介します。なおthat 節を導けない他動詞の名詞形では同格のthatは使えませんので注意が必要です。
 
(1)  that-節を導ける動詞とその名詞形:
announce (announcement:告知),assert (assertion:主張),assume (assumption: 仮定),claim (claim:主張),command (command: 命令),comment (comment:意見),conclude (conclusion:結論),decide (decision:決心),determine (determination:決定),discover (discovery:発見),explain (explanation:説明),
feel (feeling:感覚),hope (hope:希望),inform (information:情報),instruct (instruction:指示),know (knowledge:知識),notice (notice:通知) ,observe (observation:観測),order (order:命令),propose (proposition:提案),realize (realization:実現),recognize (recognition:認識),reply (reply:返事),request (request:要求),state (statement:声明),suggest (suggestion:提言),suppose (supposition:仮定), theorize (theory:理論),think (thought:考え), understand (understanding:理解)
 
<1> We have come to the conclusion that these computers are virtually the same.  
    (これらコンピュータは実質的に同じであるという結論に達した)
<2> The doctor made the suggestion that drug overuse is the main cause of headache.
    (医者は,過剰投薬が頭痛の主たる原因であると示唆した)
<3> They worked very hard in the hope that they could have a better life in the future.
    (彼らは良い生活ができることを願って一生懸命働いた)
<4> This experiment demonstrated the theory that energy is neither created nor destroyed.
    (この実験で,エネルギーは生成も消滅もしないという理論が明らかになった)
 
(2)  that-節を導けない動詞:
afford, aim, display, enable, give, offer, plot, present, provide, refuse, summarize, try
 
× This report summarizes that ….
○  This report summarizes our findings obtained in the experiment.
   (本報告は実験から得られた研究成果をまとめたものである)

× Oscilloscopes are used to display that ….
○  Oscilloscopes are used to display waveforms of electric signals.
   (オシロスコープは,電気信号の波形を表示するために使われる)
 
 

3. 同格表現が可能な独立した名詞

ここで同格表現が可能な独立した名詞とは,1-1に述べた「接続詞that以下がS + Vから構成される節を導ける他動詞から作られた派生名詞」以外の,それ自体で独立した名詞のことを意味します。このような名詞の種類はあまり多くないので,科学技術関連の英語で使われる可能性の高い代表例を以下に示します。
 
[同格表現が可能な独立した名詞]
advantage (利点),anxiety (心配),certainty (確信),chance (見込み),condition (条件),
confidence (自信),danger (危険),difference (違い),duty (義務),effect (効果, 趣旨),evidence (証拠),exception (例外),fact (事実),fear (恐れ,不安),ground (立場),idea (考え),law (規則),likelihood (可能性),message (知らせ),need (必要性),news (ニュース),notion (見解),opinion (意見),pride (誇り),probability (見込み),result (結果),sign (合図),truth (真実)
 
以下,これらの名詞を用いた同格表現の具体例をいくつか紹介します。
 
<1> Sheet displays have the advantage that they are thin and light.
 (シートディスプレイは軽くて薄い利点がある)

<2> The model can be analyzed on the condition that the boundary conditions are provided.
 (その境界条件が与えられればそのモデルの解析が可能である)     

<3> The Celsius temperature scale is based on the fact that water freezes at 0°C and that it boils at 100°C.
(摂氏温度目盛りは,水は0°Cで凍り,100°Cで沸騰するという事実に基づいている)

<4> His plan was rejected on the ground that it would cost too much money.
(彼の計画は,あまりにもお金がかかるということで受け入れられなかった)

<5> He made a comment to the effect that the task force would help solve the problem.
 (彼は,その作業部会が問題解決の助けとなるという趣旨のコメントを行った)

<6> The current atomic theory is based on the idea that everything is made up of atoms.
 (現代原子論は,すべてのものが原子からできているという考えに基づいている)
 
なお,同格のthatを用いた表現は冗長になりやすい傾向があります。したがって科学技術論文などの英文としては,できるだけ簡潔な表現に書き変えることをお勧めします。例えば上記 <1>,<2>,<4>,<5>は以下の<1’.>や <2’>,<4’>,<5’>のように書き変えることができます。
 
<1’> Sheet displays are advantageous because they are thin and light.

<2’> The model can be analyzed if the boundary conditions are provided.

<4’> His plan was rejected because it would cost too much money.

<5’> He commented that the task force would help solve the problem. 
 

4. まとめ

以下に,同格を表す接続詞thatが使える名詞についてまとめましたので参考にして下さい。
 
同格を表す接続詞thatが使える名詞
(1)  that 節を導ける他動詞の名詞形
announcement, assertion, assumption, claim, command, comment, conclusion, decision, determination, discovery, explanation, feeling, hope, information, instruction, knowledge, notice, observation, proposition, realization, recognition, reply, request, statement, suggestion, supposition, theory, thought, understandingなど

(2)  同格表現が可能な独立した名詞
advantage, anxiety, certainty, chance, condition, evidence, exception, fact, fear, ground, idea, law, likelihood, message, need, news, notion, opinion, pride, probability, result, sign, truth など
 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)氏

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績



1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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