第28回 時制-現在形の動詞の使い方

2016年10月21日 10時36分

時制を表す動詞の形には現在形、過去形、および過去分詞形があります。

ここで「現在形は現在の出来事を、過去形は過去の出来事を、
また過去分詞形は受動態や完了形などを作る場合に使われる」と
なんとなく思ってしまいがちです。

しかし動詞には「動作を表す動詞」と「状態を表す動詞」があり、
それらの動詞は内容に応じて進行形として、
あるいは助動詞と共に用いられたりしています。

そこで今回は現在形の動詞に的を絞り、現在形の動詞が表す本来の意味と
その使い方について紹介します。 

 

1. 現在形の動詞の基本的な意味

動詞が現在形で使われる場合、その意味は「ある一定期間変化しない状態」を意味しています。
したがって動詞が現在形で使われる場合は、例え動作を表す動詞 (動作動詞) であれ、
状態を表す動詞 (状態動詞) の意味に変化していることになります。

以下に現在形の本来の意味を明確にするため、状態動詞を現在形で表した場合と
動作動詞を現在形で表した場合、さらに現在進行形を使用した場合の意味の違いについて
比較して解説します。
 
<1> I belong to a large family. 
(私は大家族の一員である)

<2> He sells cars for a living. 
(彼は自動車販売員で生計を立てている)

<3> He is selling cars for a living. 
(彼は生計のために自動車を売っているところです)
 
[解説]
<1>では状態動詞belongが使われています。belongは「~に属する」という状態動詞ですから、
通常はある一定期間、その状態が変化することはありません。
したがって現在形をそのまま使用することで、「大家族の一員である」という内容が
正しく表されていることになります。

<2>では動作動詞sellが使われています。sellは「~を売る」という動作動詞ですが、
現在形で使われていることから、過去に「自動車を売る」という動作を継続して実施し、
現在も実施しているし、今後も実施することを表しています。
つまり「自動車販売員」として働いていることを意味しているわけです。

<3> では動作動詞sellが現在進行形で使われています。
「~を売る」という動作動詞sellが現在形ではなく、現在進行形で使われていますから、
一時的に「自動車を売っている」という意味を表しています。
 

2. 動詞の現在形が表す意味

上記のように現在形の動詞が現在形のまま使われると、「ある一定期間変化しない状態」
を表すことになります。このことから現在形は、特に下記の意味を表す場合に使われます。
 
(1) 一定期間変化しない状態
(2) 物の機能や能力
(3) 常に成り立つ一般的事実
(4) 繰り返される出来事や習慣
 
(1)  一定期間変化しない状態
現時点の、ある一定期間変化しない状態を表す場合は、状態動詞が現在形で使用します。
以下に具体例を示します。

<1> The number of revolutions depends on the type of generator.    
(発電機の回転数は機種によって異なる)

<2> The manual describes how to assemble the kit.   
(このマニュアルにはキットの組み立て方が書いてある)

<3> The air mainly contains oxygen and nitrogen.
(空気には、主として酸素や窒素が含まれている)
 
[解説]
<1>では、動詞としてdependが使われています。
ここでdependは「~に依存している」という状態動詞で、現時点の、
ある一定期間変化しない状態を表すことから現在形が使われています。

<2>では、動詞としてdescribeが使われています。ここでdescribeは
「~が記載されている」という状態動詞で、現時点の、
ある一定期間変化しない状態を表すことから現在形が使われています。

<3>では、動詞としてcontainが使われています。
ここでcontainは「~を含んでいる」という状態動詞で、現時点の、
ある一定期間変化しない状態を表すことから現在形が使われています。
 
(2)  物の機能や能力
1つの製品が完成すればその仕様は決定されます。
したがってその製品の機能や能力は常に一定であると考えられることから、
物の機能や能力を表す場合は現在形が使用されます。
 
<1>This computer works four times as fast as the previous ones.
(このコンピュータは従来の4倍の速度で動作する)

<2> The sensor outputs detected signals at regular intervals.
(そのセンサーは検出された信号を一定間隔で出力する)

<3> A plane mirror reflects an identical image with its sides reversed.
(平面鏡は左右が反対の同じ像を写す)
 
[解説]
<1>では動詞としてworkが使われています。
ここでworkは「働く」という意味の動作動詞ですが、現在形で使われていることから、
「機能を持つ」という状態の意味で使われています。
したがって「従来の4倍の速度で動作する(ことができる)」と訳すことができます。

<2>では動詞としてoutputが使われています。
ここでoutputは「出力する」という意味の動作動詞ですが、現在形で使われていることから、
「出力する (機能を持つ)」という状態の意味で使われています。
したがって「検出された信号を一定間隔で出力する」と訳すことができます。

<3>では動詞としてreflectが使われています。
ここでreflectは「反射する」という意味の動作動詞ですが、現在形で使われていることから、
「反射する (機能を持つ)」という状態の意味で使われています。
したがって「左右が反対の同じ像を写す(反射する)」と訳すことができます。
 
(3) 常に成り立つ一般的事実
現在形は「ある一定期間変化しない状態」を表すことができますが、
例えば自然現象のように、この期間が過去から未来にわたって変化しないのであれば、
その内容は常に成り立つ一般的事実と考えることが出来ます。

したがって一般的事実には現在形が使用されます。
以下に具体例を用いて解説します。
 
<1> Warm air is lighter than cold air.
 (暖かい空気は冷たい空気より軽い)

<2> Heat moves from a warmer body to a cooler one.
(熱は熱い物体から冷たい物体に移動する)

<3> Like magnetic poles repel each other, whereas unlike magnetic poles attract each other.
    (磁石の同極は反発し、異極は引き合う)
 
[解説]
<1>では、動詞としてisが使われています。
isは状態動詞として現在形で使われているわけですが、内容からは、
常に成り立つ一般的事実として現在形が使われていると判断することができます。

<2>では、動詞としてmoveが使われています。
ここでmoveは「動く」という意味の動作動詞ですが、現在形で使われていることから、
「常に成り立つ一般的事実」と考えることが出来ます。
したがって「熱は熱い物体から冷たい物体に移動する」のように断定的に訳すことができます。

<3>では、動詞としてrepelとattractが使われています。
ここでrepelは「反発する」、attractは「引き合う」という意味の動作動詞ですが、
現在形で使われていることから、「常に成り立つ一般的事実」と考えることが出来ます。
したがって「磁石の同極は反発し、異極は引き合う」のように断定的に訳すことができます。
 
(4)  繰り返される出来事や習慣
現在形が持つ「ある一定期間変化しない状態」を表す意味は、 繰り返される出来事や
習慣にも拡張することができます。

例えば毎日行う習慣があれば、その習慣は過去、現在、未来に渡って繰り返されると
考えられることから「ある一定期間変化しない状態」の1つと考えることが出来ます。
したがって「繰り返される出来事や習慣」にも現在形が使用されます。

以下に具体例を用いて解説します。

<1>The sun rises in the east every morning.
(太陽は毎朝東から昇る)

<2> The museum opens daily at 9:00 a.m. and closes at 5:00 p.m.
(その博物館は毎日9時に開館し、5時に閉館する)

<3> The bus leaves the airport every hour on the hour, from 8 a.m. through 8 p.m.
(バスは午前8時から午後8時の間、毎正時に空港を出発する)
 
[解説]
<1>では、動詞としてriseが使われています。
ここでriseは「(太陽が)昇る」という意味の動作動詞ですが、
太陽が東から昇ることは毎日繰り返される出来事であることから、現在形が使われています。

<2>では、動詞としてopenとcloseが使われています。
ここでopenは「開館する」、closeは「閉館する」という意味の動作動詞ですが、
博物館では通常、時間を決めて開館・閉館が毎日繰り替えされますから、現在形が使われています。

<3>では、動詞としてleaveが使われています。
ここでleaveは「離れる」という意味の動作動詞ですが、
バスは毎正時に空港を出発するわけですから現在形が使われています。

3.  まとめ

以下に、現在形の動詞の使い方についてまとめました。
 
1. 動詞の現在形が表す基本的な意味
動作動詞を含め、ある一定期間変化しない状態を表す。
 
2. 動詞の現在形が表す具体的な意味
(1) 一定期間変化しない状態
(2) 物の機能や能力
(3) 常に成り立つ一般的事実
(4) 繰り返される出来事や習慣
 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績

1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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興野先生は弊社でも論文専門の翻訳者としてご活躍されています。
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