【英語論文の書き方】第7回 原因・結果を表す動詞の使い方:その2 結果→原因

2016年6月14日 15時53分


第6回では原因と結果の関係を結び付ける代表的動詞としてcause, lead to, result in, bring about, give rise toを紹介しました。

これらの動詞はいずれも原因→結果の順で原因と結果の関係を表しますが、それでは結果→原因の順で表す場合はどのような表現を使用したらよいのでしょうか? 

そこで今回は、結果→原因の順で原因と結果の関係を表す代表的動詞表現として

be caused by,
be attributed to,
result from,
be due to

について紹介し,さらにそれらの使い方について具体例を挙げて解説します。

(1) be caused by (~に起因する、~に原因がある)

“be caused by”は動詞causeの受動態表現で,結果を主語にした場合の原因と結果の関係を表します。

動詞causeは結果に対する直接的原因を意味していますから、“be caused by” を使用した英文では、結果が主語に、直接的原因by以下に示されます。

<例1> The periodic change was caused by a faulty piece of equipment.
(周期的に現れる変化は装置の一部の不良によるものであった)

<例2> Frictional force is caused by resistance to relative motion between surfaces in contact.
(擦力は接触面間の相対運動に対する抵抗によって発生する)

上記例文の ”be caused by” は,能動態であれば第3文型で使用される動詞causeを受動態で表現した場合に対応します。したがって<例1>では,”The periodic change” (周期的に現れる変化)が結果を,”a faulty piece of equipment” (装置の一部の不良) が直接的原因を表します。

同様に<例2>では ”Frictional force” (摩擦) が結果を,”resistance to … in contact” (接触面間の相対運動に対する抵抗) が直接的原因を表しています。

また ”be caused by” は causedがcauseの過去分詞形であることから,次のように直前の名詞や名詞句を修飾する場合にbe動詞なしで使用することが出来ます。

<例3> A spark ignites the fuel in the cylinder, and the expansion caused by the combustion drives the piston.
(火花がシリンダの中の燃料に点火し,燃焼による膨張がピストンを動かす)

<例3>では,”the expansion” (摩擦) が結果を,”the combustion” (燃焼) が直接的原因を表しています。
ただしこのようにcausedがすぐ前の名詞や名詞句を直接修飾できるのは,修飾している名詞(句)が主語の場合のように容易に見分けられる場合に限られます。

したがって以下の<例4><訳例1>のように分詞構文とみなされる可能性のある場合は<訳例2>の ”that is caused” のように、関係代名詞 that を用いて修飾関係を明確にする必要があります。

<例4>可動鉄片型電流計には、磁場の中で移動する鉄片が設けてある
<訳例1> ×The moving iron type ammeter is equipped with a strip of iron caused to move in the magnetic field.
<訳例2> ○The moving iron type ammeter is equipped with a strip of iron that is caused to move in the magnetic field.

(2) be attributed to(~に起因する,~のせいである)

“be attributed to” は動詞attributeの受動態表現で,結果を主語にした場合の原因と結果の関係を表します。

動詞attributeは結果が起因する原因を意味していますから、“be attributed to” を使用した英文では、結果が主語に,起因する原因がto以下に示されます。

<例1> Aging is attributed to the action of these toxic molecules.
(老化はこれらの有毒分子の作用に起因する)

<例2> The discrepancy could be attributed to the misalignment between the two axes.   
(その矛盾は、その2軸のずれに起因している可能性がある)

<例3> These diseases can be attributed to chemicals contained in the foods we ate in the past.    
(これらの病気は我々が過去に食べた食品中に含まれる化学物質に起因する)

<例1>では,”aging” (老化)が結果を,”the action of these toxic molecules” (これらの有毒分子の作用) が起因する原因を表します。
同様に<例2>では”the discrepancy” (その矛盾)が結果を,”the misalignment between the two axes” (その2軸のずれ) が起因する原因を、<例3>では”These diseases” (これらの病気)が結果を,”chemicals contained in the foods we ate in the past” (我々が過去に食べた食品中に含まれる化学物質) が起因する原因を表します。

(3) result from (~に起因する、~に由来する)

“result from” は原因→結果の関係を表す動詞句 ”result in” において原因と結果の関係が逆転している場合に相当します。

また前置詞fromが出来事の起点を表すことから、“result from” を使用した英文では、結果が主語に、起点となる原因がfrom以下に示されます。なお “result from”は、結果を主語とする表現に良く利用されています。また修飾関係が明らかな場合は“resulting from”の形で後置修飾されることもあります。

<例1> Tsunamis generally result from earthquakes.    
(津波は一般に地震に起因する)

<例2> White light results from a mixing of the wavelengths of all colors.    
(白色光はすべての色の波長を混合することによって生じる)

<例3>Heat stroke may result from prolonged exposure to sunlight.
 (長時間太陽の下にいると日射病になることがある).

<例1>では,”Tunamis” (津波)が結果を,”earthquakes” (地震) が起点となる原因を表します。同様に<例2>では ”White light” (白色光)が結果を,”a mixing of the wavelengths of all colors” (すべての色の波長を混合すること) が起点となる原因を、<例3>では ”Heat stroke” (日射病)が結果を,”prolonged exposure to sunlight” (長時間太陽の下にいること) が起点となる原因を表します。

<例4> The loss of energy resulting from conversion of optical energy into heat is generally known as heat absorption.    
(光エネルギーが熱エネルギーに変換されることから生ずるエネルギーの損失は一般に熱吸収と言われる)

<例4>において”The loss of energy resulting from” は “The loss of energy that results from”の意味ですが、”resulting from”を用いて“The loss of energy”を後置修飾しています。したがって、”The loss of energy (エネルギーの損失)が結果を,”conversion of optical energy into heat” (エネルギーが熱エネルギーに変換されること) が起点となる原因を表します。

(4) be due to (~が原因である)

“be due to” は形容詞 “due” を用いて原因と結果の関係を表す場合に用いられます。

“be due to” を使用した英文では、結果が主語に、原因がto以下に示されますが、“due to”の形で名詞や名詞句を後置修飾する場合は、原因の意味で使用されることもあります。なお、”due to” を広い意味での前置詞と解釈し、”due to”を文頭で使用している例もありますが、フォーマルな英文としては避けることをお勧めします。

<例1> Osteoporosis is due to aging and the lack of calcium.   
(骨粗鬆症は加齢とカルシウム不足が原因である)

<例2> The rotation of a compass needle is due to the earth’s magnetic field.   
(コンパスの針が回るのは地球の磁場が原因である)

<例3> It is said that the recent increase in the strength of typhoons is due to global warming.
(台風の強度が最近増しているのは地球温暖化が原因と言われている) .

<例1>では,”Osteoporosis” (骨粗鬆症)が結果を,” aging and the lack of calcium” (加齢とカルシウム不足) が原因を表します。

同様に<例2>では ”The rotation of a compass needle” (コンパスの針が回ること)が結果を,” the earth’s magnetic field” (地球の磁場) が原因を、

<例3>では ” the recent increase in the strength of typhoons” (台風の強度が最近増していること)が結果を,” global warming” (地球温暖化) が原因を表します。

<例4> There are many premature deaths due to smoking.    
(喫煙が原因で早死にする人が沢山いる)

<例4>において “deaths due to” は、deaths”を後置修飾していますが、“deaths that are due to”の意味で使われています。

したがって、”many premature deaths (多くの早死にをする人)が結果を,smoking” (喫煙) が原因を表します。   
上記に述べた原因と結果の関係を結び付ける代表的動詞を以下にまとめました。これらの動詞は英文中では「主語(結果) + 動詞(句) + 原因)」の形で使われます。

(5) まとめ


be caused by:原因と結果の関係を受動態で表現。後置修飾も可。
be attributed to:結果への起因という形で原因と結果の関係を表現。
result from:結果への起因という形で原因と結果の関係を表現。技術文で良く使用される。“resulting from”の形で後置修飾も可。
be due to:結果への原因や理由という形で原因と結果の関係を表現。


 

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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)氏

興野 登氏三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)

日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員

テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。

テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
 

最近の実績



1. 2013/09/18 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(名古屋大学)
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)

その他:工業英語協会でのセミナーなど。

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興野先生は弊社でも論文専門の翻訳者としてご活躍されています。
これから『英語論文の書き方』シリーズとして、このような興野先生のコラムを毎月2本お届けいたします。
どうぞお楽しみに!

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2016.12月 記事の誤字を修正いたしました。
Chikama Nobuyuki様 ご指摘くださりどうもありがとうございます。

 
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