【英語論文の書き方】第21回 句動詞表現より1語動詞での表現へ
2016年11月2日 14時49分
会話などの英語では2~3語からなる句動詞 (phrasal verb) が頻繁に使われています。
しかし英語論文や技術報告書などでは、基本的に1語動詞 (single verb) が使われています。
この理由は、句動詞がくだけたinformalな印象を与えるのに対し、1語動詞は改まったformalな印象を与えること、
また句動詞がより広い意味に解釈できるのに対し、1語動詞はより限定的な意味で使われることがあげられます。
さらに1語動詞を使えば、語数が少なくなることから、より簡潔な英文を作成することに貢献できることも
その理由の1つと考えられます。
したがって英語論文の技術英語文書では、句動詞より1語動詞で表現することが奨められます。
そこで今回は、句動詞を1語動詞で表現できる表現例をいくつか集めてみましたので紹介します。
しかし英語論文や技術報告書などでは、基本的に1語動詞 (single verb) が使われています。
この理由は、句動詞がくだけたinformalな印象を与えるのに対し、1語動詞は改まったformalな印象を与えること、
また句動詞がより広い意味に解釈できるのに対し、1語動詞はより限定的な意味で使われることがあげられます。
さらに1語動詞を使えば、語数が少なくなることから、より簡潔な英文を作成することに貢献できることも
その理由の1つと考えられます。
したがって英語論文の技術英語文書では、句動詞より1語動詞で表現することが奨められます。
そこで今回は、句動詞を1語動詞で表現できる表現例をいくつか集めてみましたので紹介します。
1. 「~を取り除く」
日本語の「~を取り除く」に対応する句動詞としてはget rid of やtake away、clear offなどがあります。
そこで次の日本文をget rid ofを使って表現した一例を以下に示します。
日本文:油やサビを除去するためその表面を清掃する必要がある。
<訳例1> The surface should be cleaned to get rid of oil and rust.
一方、「~を取り除く」に対応する一般的な1語動詞としてはremove やeliminateなどがあります。
したがって1語動詞eliminateを使えば<訳例1> は<訳例2>のように表現できます。
<訳例2> The surface should be cleaned to eliminate oil and rust.
これらの英文から分かるように、句動詞を用いた<訳例1>より、<訳例2>の方がformalであり、
さらに内容もより明確化されています。
そこで次の日本文をget rid ofを使って表現した一例を以下に示します。
日本文:油やサビを除去するためその表面を清掃する必要がある。
<訳例1> The surface should be cleaned to get rid of oil and rust.
一方、「~を取り除く」に対応する一般的な1語動詞としてはremove やeliminateなどがあります。
したがって1語動詞eliminateを使えば<訳例1> は<訳例2>のように表現できます。
<訳例2> The surface should be cleaned to eliminate oil and rust.
これらの英文から分かるように、句動詞を用いた<訳例1>より、<訳例2>の方がformalであり、
さらに内容もより明確化されています。
2. 「~を調べる」
日本語の「~を調べる」に対応する句動詞としては look into や see into,check up on などがあります。
一方、1語動詞としてはexamine やinspect、investigate などが考えられます。
したがって下記の日本文には、その内容から句動詞 look intoを用いた<訳例1>と、
1語動詞examineを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:その問題の原因を調べることが重要である。
<訳例1> It is important to look into the cause of the problem.
<訳例2> It is important to examine the cause of the problem.
一方、1語動詞としてはexamine やinspect、investigate などが考えられます。
したがって下記の日本文には、その内容から句動詞 look intoを用いた<訳例1>と、
1語動詞examineを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:その問題の原因を調べることが重要である。
<訳例1> It is important to look into the cause of the problem.
<訳例2> It is important to examine the cause of the problem.
3. 「~を見つける、発見する」
日本語の「~を見つける、発見する」に対応する句動詞としてはfind outがあります。
一方、1語動詞としてはdiscoverを使用することが可能です。
したがって、下記の日本文にはその内容から、句動詞 find outを用いた<訳例1>と、
1語動詞discoverを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:ガリレオは、天文学に関する多くの新事実を発見した。
<訳例1> Galileo found out many new facts about astronomy.
<訳例2> Galileo discovered many new facts about astronomy.
一方、1語動詞としてはdiscoverを使用することが可能です。
したがって、下記の日本文にはその内容から、句動詞 find outを用いた<訳例1>と、
1語動詞discoverを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:ガリレオは、天文学に関する多くの新事実を発見した。
<訳例1> Galileo found out many new facts about astronomy.
<訳例2> Galileo discovered many new facts about astronomy.
4. 「(光や熱などを) を発する」
日本語の「(光や熱などを)を発する」に対応する句動詞としては give offがあります。
一方、1語動詞としてはemitやradiateなどが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 give offを用いた<訳例1>と、
1語動詞emitを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:そのパンタグラフからはしばしば火花が出る。
<訳例1> The pantograph often gives off sparks.
<訳例2> The pantograph often emits sparks.
一方、1語動詞としてはemitやradiateなどが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 give offを用いた<訳例1>と、
1語動詞emitを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:そのパンタグラフからはしばしば火花が出る。
<訳例1> The pantograph often gives off sparks.
<訳例2> The pantograph often emits sparks.
5. 「(数値) を書きとめる、記録する」
日本語の「(数値) を書きとめる、記録する」に対応する句動詞としては take downやwrite downがあります。
一方、1語動詞としてはrecordが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 take downを受動態で用いた<訳例1>と、
1語動詞recordを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:これらのデータを週に1回、3か月にわたって記録した。
<訳例1> These data are taken down once a week over three months.
<訳例2> These data are recorded once a week over three months.
一方、1語動詞としてはrecordが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 take downを受動態で用いた<訳例1>と、
1語動詞recordを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:これらのデータを週に1回、3か月にわたって記録した。
<訳例1> These data are taken down once a week over three months.
<訳例2> These data are recorded once a week over three months.
6. 「~を考え出す,開発する」
日本語の「(アイディアなど) を考え出す」に対応する句動詞としては come up withがあります。
一方、1語動詞としてはdevelopが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 come up withを用いた<訳例1>と、
1語動詞developを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
なお、一語動詞developは「新しいものを開発する」の意味で使われることが多い動詞ですが、
「(アイディアなど) を考え出す」の意味で使用することも可能です。
日本語:技術者はその製品のための独自のアイディアを考え出した。
<訳例1> The engineers have come up with a unique idea for the product.
<訳例2> The engineers developed a unique idea for the product.
一方、1語動詞としてはdevelopが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 come up withを用いた<訳例1>と、
1語動詞developを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
なお、一語動詞developは「新しいものを開発する」の意味で使われることが多い動詞ですが、
「(アイディアなど) を考え出す」の意味で使用することも可能です。
日本語:技術者はその製品のための独自のアイディアを考え出した。
<訳例1> The engineers have come up with a unique idea for the product.
<訳例2> The engineers developed a unique idea for the product.
7. 「~を維持する」
日本語の「~を維持する」に対応する句動詞としては keep upがあります。
一方、1語動詞としてはmaintainが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 keep upを用いた<訳例1>と、
1語動詞maintainを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:サーモスタットは所定の温度を維持する機能がある。
<訳例1> The thermostat keeps up a prescribed temperature.
<訳例2> The thermostat maintains a prescribed temperature.
一方、1語動詞としてはmaintainが考えられます。
したがって下記の日本文にはその内容から、句動詞 keep upを用いた<訳例1>と、
1語動詞maintainを用いた<訳例2>の英文が可能ですが、技術英文としては<訳例2>が推奨されます。
日本文:サーモスタットは所定の温度を維持する機能がある。
<訳例1> The thermostat keeps up a prescribed temperature.
<訳例2> The thermostat maintains a prescribed temperature.
まとめ
上記のように技術英文では、文の内容が変わらないのであれば、句動詞よりformalでかつ意味が限定的な
1語動詞で表現することが推奨されます。
そこで1語動詞で書き変えられる可能性のあるその他の句動詞の一例を、上記の例文を含め以下にまとめました。
(1) blow up (~が爆発する) ⇒ explode
(2) come up (現れる) ⇒ appear, emerge
(3) come up with (~を考え出す) ⇒ develop
(4) find out (~を見つける、発見する) ⇒ discover
(5) get close to (~に近づく) ⇒ approach
(6) get rid of (~を取り除く) ⇒ eliminate
(7) give in (to) (~に降伏する) ⇒ surrender (to)
(8) give off (~を発する) ⇒ emit
(9) go down (~が下降する) ⇒ descend
(10) go into (~に入る) ⇒ enter
(11) go on (~を継続する) ⇒ continue
(12) hand in (~を提出する) ⇒ submit
(13) look at (~を調べる、検査する) ⇒ examine, investigate
(14) make up (~を構成する) ⇒ constitute
(15) keep up (~を維持する) ⇒ maintain
(16) look into (~を調べる) ⇒ examine
(17) push away (~を押しのける) ⇒ displace
(18) put off (~を延期する) ⇒ postpone
(19) put out (~を消す、消火する) ⇒ extinguish
(20) show up (~が発生する) ⇒ occur
(21) take/write down (~を記録する) ⇒ record
(22) work out (~を算出する) ⇒ calculate
1語動詞で表現することが推奨されます。
そこで1語動詞で書き変えられる可能性のあるその他の句動詞の一例を、上記の例文を含め以下にまとめました。
(1) blow up (~が爆発する) ⇒ explode
(2) come up (現れる) ⇒ appear, emerge
(3) come up with (~を考え出す) ⇒ develop
(4) find out (~を見つける、発見する) ⇒ discover
(5) get close to (~に近づく) ⇒ approach
(6) get rid of (~を取り除く) ⇒ eliminate
(7) give in (to) (~に降伏する) ⇒ surrender (to)
(8) give off (~を発する) ⇒ emit
(9) go down (~が下降する) ⇒ descend
(10) go into (~に入る) ⇒ enter
(11) go on (~を継続する) ⇒ continue
(12) hand in (~を提出する) ⇒ submit
(13) look at (~を調べる、検査する) ⇒ examine, investigate
(14) make up (~を構成する) ⇒ constitute
(15) keep up (~を維持する) ⇒ maintain
(16) look into (~を調べる) ⇒ examine
(17) push away (~を押しのける) ⇒ displace
(18) put off (~を延期する) ⇒ postpone
(19) put out (~を消す、消火する) ⇒ extinguish
(20) show up (~が発生する) ⇒ occur
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執筆者紹介 興野 登(きょうの のぼる)氏
三菱電機株式会社を経て現在ハイパーテック・ラボ代表
1971年,東北大学工学部電気工学科卒業
2005年,熊本大学大学院自然科学研究科卒業
博士(工学)
日本工業英語協会理事・副会長・専任講師
日本工業英語協会日本科学技術英語教育センター長
中央大学理工学部非常勤講師(科学技術英語,Academic Writing & Presentation)
東京工業大学大学院非常勤講師(Academic Writing)
東京電機大学大学院非常勤講師(Academic Writing & Presentation)
元英語翻訳学校講師(技術翻訳)
元音響学会,電子情報通信学会,AES (Audio Engineering Society) 会員
テクニカル英語の翻訳者として幅広く活躍。
30年以上に渡り電機メーカーにてスピーカーを中心とした音響技術の研究開発に従事。この間,多数の海外発表や海外特許出願を実施。 会社を早期に退職し,神奈川工科大学大学院、日本大学,神田外語大学,上智大学,中央大学、東海大学,東京工業大学等にて音響工学および技術英語の教鞭をとる。
テクニカル・ライティングは工業英語協会の中牧広光氏に師事し、企業や大学等での研修も多数受け持つ。
工業英検1級、実用英語技能検定1級(優秀賞)、通訳案内業ライセンス保持。
2. 2013/10/02 「科学英語論文スキル・セミナー― How to Brush Up Your Academic Writing Skills―」(IEEE, GCCE2013, Tutorial)
3. 2013/12/25 「理工学学生を対象とした英語論文ライティング入門」(山口大学)
4. 2014/01/21 「科学技術英語ライティング」(名古屋大学)
5. 2014/05/21 「科学論文英語スキルセミナー」(名古屋大学)
6. 2014/10/08 “Concept of 3C’s in Academic Writing and Practical Academic Writing Skills for Students and Researchers in the Fields of Science and Technology”, IEEE, GCCE2014, Tutorial
7. 2014/12/02 「英語論文の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
8. 2015/01/07 「科学論文英語ライティングセミナー」(北海道大学)
9. 2015/05/13 「理系学生向け英文ポスタープレゼンテーションセミナー」(名古屋大学)
10. 2015/06/08「科学英語を正確に書くための基本と実践講座(Ⅱ)」(北海道大学)
11. 2015/06/17「英語論文」の書き方セミナー(基礎編)」(能率協会)
12. 2015/07/08「英語論文」の書き方セミナー(応用編)」(能率協会)
その他:工業英語協会でのセミナーなど。
*************
興野先生は弊社でも論文専門の翻訳者としてご活躍されています。
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最近の実績
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